形容詞と副詞は難しい。
気を付けていてもその難しさは英作文に思わず出てしまう。生徒の英作文を添削していると、
「このケーキはとてもおいしかった」を
This cake was very delicious.としていたり、
「これはとてもうまくいった」を
This was very successful.としているものを見かける。
これらの英文のどこが悪いのか今回は見ていきたい。実は、形容詞は段階性のあるもの(比較級、最上級を持つもの)と非段階性のもの(比較級、最上級を持たないもの)の2種類がある。
英文法の本はいろいろと出てるが、形容詞のこの特徴をしっかりと取り上げているものは案外すくない。洋書タイプだが、Martin HewingsのAdvance Grammar in Useが詳しく解説している(学校でもあまりやらないかもしれない)。
まず、段階性を持つ形容詞とは、big, busy, clever, happy, fast, different, popularなどの比較級や最上級を持つタイプである。
これらの段階性がある形容詞に限って、very, extremely, hugely, slightly, immensely,rather, a bitなどで修飾することができる。
非段階性の形容詞とは、excellent, huge, terrible, superb, wrong, domestic, environmental, impossible, unique, unknownなど、すでに最上の表現になっているか、比較級、最上級を持たない性質のものである。いうなれば、弱、中、強、というグラデーションがないのである。
これら非段階性の形容詞には、absolutely, completely, entirely, simply, perfectly, practically, virtually, fully, almost, largelyなどが使える。
(もちろん、使う組み合わせによっては奇妙な表現になるので、選ぶ必要はある)
そこで先ほどの英作文は、
This cake was absolutely delicious.
This was completely successful.とすべきである。
deliciousは最上表現の形容詞なので(5段階で5がつく)、もはやveryで強調できないのだ。successfulはグラデーションがそもそもないので(うまくいったか、いかなかったかの二元論)veryで強調することができない。(なお、very tastyとはいえる)
似たようなタイプで、surprisingとtiredは最上表現ではないので(5段階で3.5くらいとしておく)、veryを使って、
This iPhone is very surprising.
I'm very tired.と言って5段階で5までシフトできるが、
amazingとexhaustedは最上表現(5段階で5)なので、
This iPhone is very amazing.
I'm very exhausted.とは言えないのだ。
This iPhone is absolutely amazing.
I'm completely exhausted.などとする。
形容詞に段階性があるのかないのか、そしてどんな副詞なら修飾できるのか、すべてをマスターするのは骨が折れる。しかし、試験で迷ったときにこの間違いを回避する方法が一つある。それは、reallyを使うのである。
実は、段階性のある形容詞、非段階性の形容詞、ともに使える副詞があり、それらは、
fairly, pretty, quite, reallyなどである。
quiteは段階性のある形容詞に使うと、
This CD is quite good.とquiteを強くいえば、
「このCDは予想ほどではなくて、いまひとつだ」になり、
This CD is quite good.とgoodを強くいえば、
「このCDは(中くらいの出来で)そこそこだ」になる。
非段階性の形容詞とともに使う場合は、形容詞に強勢を置き、「完全に」の意味になる。
The views from the hotel are quite wonderful.
(ホテルから見る景色はまったくもって素晴らしい)
強く読む箇所によって意味が変わるので使い方に注意がいる難しい単語である。
fairlyとprettyは若干控えめな表現なので、reallyを使えば大丈夫である。