Drink Coca-Colaは「コカ・コーラを飲め」と訳すと、どこかきつい響きがあります。外山滋比古氏の「ことばの教養」によると、英語で命令文を使ってるときは自然に響くものが、日本語にした途端にきつい響きになるのだそうです。
では「コカ・コーラをお飲みください」はどうでしょうか。
なんとなく看護師が患者に薬を飲ませるような響きで奇妙です。
「飲みましょう」だと学校の先生のようです。
「召し上がりませんか」ならかなりソフトですが、CMとしてはパンチが弱くなります。
そこで、「スカッとさわやかコカ・コーラ」になったとのことです。
英語のCMでは命令文を使った方がきびきびした口調になり、視聴者の心をつかむものですが、敬語の使い方にうるさい日本語では強い言葉は敬遠されるのです。
他にも、
スプライトの宣伝では、
Obey your thirst.があります。
これを日本語で「のどの渇きに従え」としたのでは不自然です。訳として正解はないですが、自分なら「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ」とします。
アメックスの宣伝では、
Don't leave home without it.があります。
「持たずに出かけるな」といってはきついですが、「出かけるときは忘れずに」というと自然になります。
つまるところ、メールや取扱説明書で英語の命令文を使っても、日本語のときほど、どきつい響きにはならないので、回りくどい言い方をする必要はないことになります。
「このソフトを例にとってみましょう」なら、
Take this software for example.でいたって自然です。
英語では変にLet'sとかpleaseを毎回つける必要はないのです。
日本語のときだけLet'sやpleaseがついているものと仮定して訳したほうがいいことになります。
英語は命令文でも自然。日本語ではきついので工夫がいる。
文化の違いはなんとも面白いものです。