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外国語上達法 何をどこまで学ぶか

語学といったら英語と考える人が多くなりましたが、大学で学ぶ第二外国語を含め、多くの人達は「どこまで学ぶか」「何か国語身に付けるか」という目標はあまり設定せずに漠然と学んでいるような気がします。

 

自分自身も英語講師ですが、ドイツ語と

フランス語を漠然と齧ることはあっても、「どこまで学ぶか」を明確にする必要があると時折感じています。

 

今回は千野栄一氏の「外国語上達法」から、どうすれば語学はうまくなるか、何か国語を学ぶのが実際的なのか、どこまでやるのがいいのか、それぞれ見ていきたいと思います。

 


まず、語学をやる上で氏が本書で何度も強調しているのが、「忘れることを恐れるな」です。

語学の習得は、ザルで水をしゃくっているようなもので、絶えずしゃくっていないと水がなくなってしまう。水がどんどん漏れるからといって、しゃくうのを止めるとザルははぜてしまう」

 

千野氏は週一回、土曜の午後一時間半の講習を2,3年やっていくうちにチェコ語をどうにか読めるようになったようですが、途中でやめなかったことが大事であったと力説しています。

 

次に英語の大切さについても氏は言及しています。

 

「一つ外国語を選ぶなら英語」

 

「もし絶対に一生英語を使わないことが分かっていれば英語を学ぶ必要はないが、思いがけず外国、それもイギリスやアメリカとは限らず、英語ならどうにか通じる国へ行くことになったり、会社に英語の手紙が来たりすると、突然英語が必要になるのだ」

 

「英語のやさしいテキストが読めれば、世界の非常に多くの言語からの翻訳が読め、またそれらの国の言語と英語との辞書が使えることになる。アフリカや東南アジアの言語や文化を研究するのに英語を知らなければどうにもならない。もし、ひとたびセルビア・クロアチア語を学ぼうとすると、英語では辞書など用意されているが、日本語を介したものは一切ない」

 

つまり、英語ができないと少しマイナーな言語を学ぶ手段すらないという状況になります。

 

今度は何か国語を学ぶかについて。

 

「もし本当に上手に外国語を読み書き話せるようになろうとしたら、正直に言って三年から五年はかかる。従って、二つあるいは三つの言語がそういう状態にある人は、少なくとも10年近く語学の勉強をしている人ということになる。数多くの外国語ができる人でも読み書き話せるという外国語は二つあるいは三つにすぎない

 

「もし五つも六つもの外国語が読み書き話せる状態でスタンバイにあるとすれば、その人は絶えずそれらの言語を忘れないように繰り返さなければならない。私の知っている人に12の言語をアクティブに話せる人がいるが、この人はそれらの言語を忘れないように絶えず時間を決めて繰り返している。もし仮に一日おきに一つの言語を30分ずつ繰り返すとしても、週に18時間が復習にとられることになり、こうなっては外国語習得の奴隷としか言いようがない。読み書き話せるという三拍子揃ってできる言語は一つか二つで、三つという人は少ない。どの言語を三拍子揃った言語にし、どの言語を受け身な読めるだけの言語にするかはよく考えないといけない。単に二週間の旅行のための外国語なら、20までの数と、ごく身近な挨拶とを勉強すれば足りるとしなければならない」

 

次に上達に必要な要素について。

それは、お金と時間とのこと。

 

「社会に出て仕事のあとお金を払って習いに行くと上達するのは、目的意識がはっきりしているからと、お金を払うからに他ならない」

 

「ただ、お金だけでもだめで時間も必要。お金だけで語学ができるのであれば、松下幸之助氏など何十という言語を身に付けられるはずである。ところがこのような人たちは、会議やら相談などで忙しく、人称語尾を繰り返したり、単語を覚えたりする時間はないのである」

 

「ある外国語を習得しようと決心し、具体的に習得に向かってスタートしたときはまず半年ぐらいはがむしゃらに進む必要がある。これは人工衛星を軌道に乗せるまでロケットの推進力が必要なのと同じで、一度軌道に乗りさえすればあとは定期的に限られた時間を割けばいい。このとき、一日に6時間ずつ4日やるより、2時間ずつ12日した方がいい。毎日少しずつでも定期的に繰り返すことだ重要。短期間に急激に習得した言語は短期間に急激に忘れるが、長い時間をかけて習得した語学は忘れるのに長い時間がかかるという事実がある

 

そして最後に勉強法についてです。

 

「新しい語学の初歩の段階では、辞書はそれほど重要な役割を演じない。辞書が重要な意味を持ってくるのは中級以後で、上級にいってからは辞書の良し悪しと、その引き方の巧拙が大きな意味を持ってくる」

 

「記憶力の低下はやむを得ない。繰り返しだけが衰えた記憶を補う唯一の方法」

 

「まずは何はともあれ、やみくもに千の単語を覚えることが必要である。この千語はその言語を学ぶための入門許可証のようなものである。この千語を覚えるために辞書を引いて覚えるのは無駄である。辞書を使うのはもっと後のことで、この段階ではすでに訳のついている単語を覚えればいい。どうしてもその言語をモノにしたいという衝動力を使い、そのエネルギーの燃え尽きる前に千語を突破すること。もし千語を突破できれば、その言語の単語の構成がなんとなく分かるようになり、千五百にするには最初の千語の半分よりはるかに少ないエネルギーで足りるようになる」

 

そしてこれは英語に関してではないと思いますが、

「もし辞書を引き引きその言語で書かれたテキストを読みたいというのであれば二、三千語で足りる。ここまで覚えればその言語に関しては一応の上がりである」

 

 

ざっと見てきましたが、まとめると、

 

・忘れることを恐れてはいけない

・繰り返しが学びの母

・英語ができないと開かれない世界がある

・一つだけ選ぶなら英語

・急激に覚えた言語は忘れるのも早い

・長い時間をかけて学んだ言語は忘れにくい

・読み書き話せる言語は3つくらいが限界

・お金と時間はかかる

・辞書は中級以降から重要になる

・最初の1000語を何が何でも覚える

 

他にもいろいろと語学の達人たちの話を読むことがありますが、皆大体これに近いことを述べています。非常に学びのある一冊です。語学の勉強で行き詰ったときに手に取ってみると、救いになることもあります。

 

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