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語学で身を立てる 英語+αの大切さ

「やるんなら、英語ですよ」

 

これは、ある予備校の古文の先生から出てきた言葉である。

 

「オレは古文だけど、古文なんて予備校の先生以外じゃ潰しがきかないんだ。(講師を)やるんなら英語ですよ」と。

 

個人的に、古文は教養として大切だと思うが、確かに予備校の先生をやるなら英語かもしれない。

 

その先生曰く「英語なら予備校の先生じゃなくても、通訳とか翻訳とか一般企業に勤めるとか、いくらでも道がある。予備校の先生をやるにしても文系理系両方から需要のある英語が有利だ」と。

 

こういう話は社会人になっていろんな塾で働いてからは聞いたことがなかったので、あれは結構素直な意見だったのではないかと今になって感じる。

 


英語を活かす職業は確かにいろいろある。

 

ツイッターで為末大氏も、「最近のオリンピック選手がメダルをよくとるのは、英語力が上がってきているからじゃないか」と述べている。英語ができると海外選手と臆することなく張り合っていけるのだと。スポーツ選手も英語力があると有利になる時代がやってきた。

 

今回紹介する猪浦道夫氏の「語学で身を立てる」にもいろいろと語学力を活かした職業が紹介されている。

この本が書かれたのは2003年。少し古くなってるかもしれない。

自分がこの本の存在に気づいたのは学生時代だったが、当時は英語以外の語学の話が多いという感想を持つだけであった。紹介されてる職業は、翻訳、通訳、語学教師、一般企業に勤めるなど、わりとベタなものが多い。たしかに語学力を活かす職業は昔と今であまり変わらないかもしれないが、どうやって希少価値のある語学力をつけるかが問題になる。

 

この本の最大の特徴だが、英語力に加えてもう少し他の言語ができると大きな強みになるという話が出てくる。英語一強の時代には見落とされがちな視点なので、今回は以下に引用してみたい(今回は第二外国語で仕事を得るというより、第二外国語、第三外国語の力を借りて英語力をさらにブラッシュアップする話にする)。

 

「英語を究めるためにも、なにか別の言語(特にフランス語、ドイツ語を勧めます)を少しでもいいですから勉強してみると、英語の本質がより深く理解できることを保証します」

 

「英語は語尾変化や活用による、主語や目的語といった文の要素を明確に表す方法や、動詞の人称や数を細かく表す方法を失ってしまいました。それを補うために、語順がやかましくなり、動詞にはまめに主格人称代名詞をつけることになりましたが、全体的にはただ単語を並べているだけという印象を受けるようになります」

 

「そうした英語の特殊性を知らずに語学学習をしているとどうなるかというと、文の構造や論理を考えなくなってしまうのです。英語以外の外国語の学習経験のない人は、なにが主語だとか、これは前置詞か副詞かとか、格はなにかといったことを深く考えることなく、単語の暗記、いいまわしや文章の丸暗記の途方もない蓄積の果てに、英語がマスターできると思っている人も少なくありません」

 

これは確かにその通りだと思う。

ツイッターでDMを試しに開放しておくと、やってくる質問は「どうすれば単語を覚えられますか?」といった類のものばかりである。

 

しかし単語力だけで押し切ることができない瞬間が来る。

たとえば、

the issue with which it is related

という英文があったとして、

(   )関係した問題

 

1それと

2それが

3それに

 

この空所に入るのはどれか?

と答えさせる問題では多くの人がフィーリングでやってしまう(正解は2である)。

 

もしこの英文が、

the park which I usually visitなら、

「私がよく訪れる公園」であって、「私と」、「私に」では変だとすぐわかるのは、

一人称単数が、

I, my, meと格変化するからである。

これがitになると、

it, its, itと、主格と目的格が同じ形をしている。

そこで主格か目的格か、見抜くには語順が大事になってくる。今回はbe動詞の前だから主格の位置なので、「それが」でなければならない。

 

ドイツ語を学ぶと、1格「~が」2格「~の」3格「~に」4格「~を」と格を意識するようになるので、この辺りを曖昧にすることはなくなる。

 

 

ところで、英語には未来時制が存在しない言語だと言われている。

現在時制と過去時制は存在する。活用語尾があるからである。

英語はwillやbe going toを使うことで、とりあえず「現在から見た将来のことを推測してるだけ」と言われる。そして日本語にも未来形はない。

 

たとえば、

「私はテニスをする」は現在形だが、

「私は来週、テニスをする」は現在形を使って将来のことを言及してるにすぎない。

「私は来週、テニスをするだろう」としても現在から推測してるに過ぎない。

 

今度は、

「私は来月、フランス語を理解する」はどうだろう。これは変である。

つまり、日本語は状態動詞では未来について言及できず、動作動詞の現在形でしか表現できないことに気づく。

 

なんと、英語と日本語では未来は表現できなかったのだ。

(ただ、デクラークという学者は未来形はあると主張してる。しかし多くの学者は未来形はないという立場をとってる)

 

では、未来形はどうすれば表現できるのか。

未来形が存在する言語の力を借りるしかない。

フランス語だとちゃんと未来形としての活用語尾が存在する。つまり他の言語の力を借りることで、自分が普段使っていた言葉の限界について知ることができるのである。

 

英語以外の言語を学ぶことで英語がどんな姿をしてるのかがよりよくわかる。

英語に加えてもう二つくらい外国語を学ぶといろいろと見えてくるのだ。

 

東京から一歩も出たことがない人は、東京の地理に詳しくなっても東京という街の本質が理解できていないのと同じである。京都や奈良にいくと、東京は新しい街だったと気づくし、外国にいくと、東京は極めて治安のいい街であることにも気づく。家は小さいかもしれないが。

 

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