英語塾といった、個別指導で自由英作文の添削を大量に行います。
生徒は書き方が分からないと、日本語で感想文を書くように「起承転結」で話を広げてしまいますが、自由英作文でこれをやるとアウトになります。
特にTOEFLや英検準1級、英検1級で日本流の起承転結スタイルで書くと、「論理的ではない」とみなされ、大幅に減点されてしまいます。
大学受験では、近年では京都大学が鉄板の英文和訳2題、和文英訳1題を変更して自由英作を出してきましたし、東京外国語大学、一橋大学、早稲田大学の文系学部でも自由英作が出されますので、「書き方」は押さえておく必要があります。
まず英語で書くときは、3段構成にします。
・イントロ(自分はどんな意見を持っているか、いきなり結論を書くこと)
・ボディ(なぜそのように考えるのか、具体駅な理由を3つほど提示すること)
・コンクルージョン(最初のイントロで書いた主張を再度、同じように念押しで書くこと)
ボディで3つ理由を書くことから、5パラグラフ・エッセイとも呼ばれています。
(ただし、東大では50語前後で情報を圧縮して書く必要があることから、このスタイルでは書かないことになります。東大は例外です)
日本流の起承転結とはだいぶ異なるスタイルです。
では、なぜ英語では日本の書き方とは違うのか。
その理由が、渡邉雅子氏の「論理的思考とは何か」(岩波新書2036)に出てきます。
何をもって「論理的」とみなすかは、文化によって異なるとのこと。
作文における論理展開の仕方は大きく分けて4つあり、
・アメリカ(経済領域)(エッセイ)
・フランス(政治領域)(ディセルタシオン)
・イラン(法技術領域)(エンシャー)
・日本(社会領域)(感想文)
があります。
アメリカのエッセイでは先ほど紹介した通り、三段構成にします。
アメリカでは経済を優先するので、効率重視で、まずは結論ありきで書きます。
この結論を先に書くスタイルにより、大学教員は大量のエッセイを採点しやすくなり、大学が大衆化されました。
また、効率性重視で余分な情報は切り捨てることから、エッセイでは文化的な慣習を受けにくくなります。
このアメリカ式の論理展開は、ニュース番組を視聴してても、会話の中でのやりとりにも見られ、この形式に慣れていない日本人からするとやや攻撃的に映るかもしれません。
そして日本の大学受験生が身に付けようとしてるのは、まさにこのアメリカ式の論理展開の仕方なのです。
フランスではディセルタシオンと呼ばれる小論文で、弁証法で書きます。
まず主題を書き、そこから「一般的な見方」「それに反する見方」そして「それらを総合する見方」へと展開していきます。つまり「最終的に何が導き出されるか」を重視します。フランスは政治重視の国で、フランス革命など経験したことから、アメリカ式の効率重視のスタイルではないのです。国の命運を決めるようなことが多かったことから、弁証法で慎重に議論を重ねるスタイルなのです。
イランではエンシャーと呼ばれ、神の秩序によってつくられたこの世界は「自然の集合体」として捉えられ、自然も人間もその秩序に従うことが求められます。法技術を重視する国では、すでに出来上がったものこそ秩序して大切であると考えられます。
小論文では詩の一節やことわざ、神への感謝のことばが述べられ、すでに大勢の過去の人々によって育まれてきたものを引用することが説得力に繋がり、真理だとみなされるスタイルです。
最後に日本式ですが、これは感想文と呼ばれ、起承転結で書きます。社会が重視される日本では「共感されるか否か」が大切で、共同体を成り立たせる親切や慈悲、譲り合いといった「利他」が社会を形成するとみなされています。感想文の中では、主題を書いたら、それを通じて「自分はどのように変化したか」を最後にまとめます。
自分の考えを深める過程で、自分の意見を押し通さずに、異なる意見への配慮、すなわち他者への配慮が示されることになります。
こうして見ると、何をもって論理的と考えるかは文化によって全く異なることがわかります。それは何を優先するかで変わってくるからです。
受験レベルでは、まずはこのアメリカ式の三段構成に慣れ親しむことが大切です。
そして、ぜひとも「論理的思考とは何か」を手に取ってみてください。素晴らしい本です。